嫌煙派のタバコ表現規制は筋が通っている。だって表現規制で人は死なないから。

 ちょっと今ソースを探しいるけど、タバコの売上は、ニコチンの量ではなく、広告の量に比例するというデータがある。この事実は、タバコを吸っている人がニコチン依存によって吸ってるのではなく、かっこよさなどのイメージが大きく関係しているということを示している。
 アニメやドラマとの因果関係は不明だが、少なくとも暴力シーンや性犯罪よりも喫煙は大きく関係してそうだ。だって銘柄こそ不明だが、タバコそのもののイメージをあげているという点でアニメだって「広告」だろうから。
 だから、喫煙が社会から取り除かれるべきだと考えている人が、アニメでの露出や広告を減らすべきだ、というのは極めて筋が通っている。表現の自由は絶対ではない。煙草による害と表現規制による害どちらが大きいか比べて判断する必要がある。これは難しい点だが、害の深刻さで比べればタバコのほうがずっとはっきりしている。タバコで人が死ぬが、表現規制では死なない。漫画家が自由にものが書ける状態とタバコによって多くの人が肺がんになり命をなくす社会のどちらがより避けるべきか。どうも反表現規制側は分が悪いように思える。
 ちなみに私は嫌煙派ではない。だがこのように嫌煙派に言われるとなかなか反論が思いつかない。広告を減らさなきゃ意味がない、というのはそうだけど、広告もアニメのシーンも減らせばよいのであって、表現規制すべきでない根拠にはならない。
 

生涯収入で、本当に東大生は聖心に負けるのか


週刊 東洋経済 2009年 10/24号 [雑誌]

週刊 東洋経済 2009年 10/24号 [雑誌]

オンラインでとっている東洋経済の大学ランキングを見た。

1位となったのは神戸女学院大学兵庫県西宮市にあるミッション系の伝統校だ。昨年も4位にランクインしていたが、今年は在京の共学校を抜き去りトップに立った。生涯給料が比較的高い金融系企業に4分の3が就職したのがランキングを押し上げる結果につながった。
 2位は昨年と同様、聖心女子大学。こちらも金融系企業への就職が対象者の3分の2に及ぶ。3位は昨年1位の一橋大学。ベスト10までに8校が入るという、女子大が大健闘した結果となった。共学校は慶應義塾大学が8位(昨年4位)、東京大学が12位(同3位)などにとどまった。

 こういう生涯収入ランキング見て思うけど、全く参考にならないよね。なぜか、高位には二流女子大が多数ランクイン。女子大といってもお茶の水とかじゃない。高偏差値大学では、3位の一橋はいいとして、8位に慶応、12位に東大だ。東大卒や慶応卒の人(特に女子)はこれを見て複雑な気分になるに違いない。高校時代ろくに受験勉強もせずにのんびりしていた同級生に負けるとは。だいち、彼女らは大学時代いや、もっと前から玉の輿を狙って偏差値の高い大学の男子と付き合うことしか考えていなかったじゃないか*1。企業に入っても自らは努力せずに出世しそうな男子を狙って、あっという間に寿退社してしまうに違いない、と。そのようにあまりよく主わない難関大出身女子はすくなくないかもしれない。
なんでこのような結果になったのか、ランキングの算出方法を見てみると、

ランキングは、今年3月卒業生の主な就職先企業の生涯給料を、企業の平均年収や厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査(2008年)などを使って推計。それを就職人数で掛け合わせ、加重平均して大学別の生涯給料を算出した。参考までに30歳時点の推計年収も掲載している。

 要するに「就職した企業の平均生涯収入」×「そこに就職した学生の割合」ということらしい。当然、多くの学生が平均生涯年収の高い企業に就職した大学が高位にランクインする。
 だが問題点は、第一に、「企業の生涯給料」をかけ合わせている点。おそらく企業で平均されているので、総合職と一般職、事務職の給料の違いを反映しない。これでは、平均生涯年収3億の企業の一般職に就職した某女子大生に、2.5億の企業の総合職の東大生は、「生涯収入」で負けることになってしまう。
実際、

こうした結果の背景には、各大学のキャリア戦略の成果もあるが、この年の卒業生(09年採用)は、売り手市場の最後の年で、金融系企業を中心に大手企業が採用数を大幅に増やしたことが挙げられる。そして、その広がった枠を女子学生が確実にものにしたことが結果につながった。実際、神戸女学院大や聖心女子大の3大メガバンクなどへの就職実績は前年の倍近い数字となっている。

 やっぱり一般職を多くとる年収の高い金融系に多く就職した結果のようだ。
 また、一番の問題点は「生涯収入」とうたっておきながら、勤続年数や出世の仕方、スピードを無視している点。参考までに30才時点での推定平均年収も載せた、とあるがトップテンに入った女子大出身者のうち、いったいどれほどが30まで会社に残っているのだろう。ましてそのうちどれだけが競争に打ち勝って出世するのだろう。
 以上の点をきちんと考慮して、算出しなおせば、結果はガラリと変わるに違いない。それはもしかしたら今回のランキング算出の倍以上の時間がかかるかもしれない。でも、そうした点を考慮していないランキングは単に無意味だからやってもしょうがない。
 もちろん、以下のような

最近の採用現場では「女子のほうが積極的」という話がよく出る。このランキングにも、女子学生が収入など将来のキャリアを積極的に見据えている現状が表れている。

 点を否定するつもりはない。「将来のキャリア」なのかは別として将来を見据えている人は多そうだ。

*1:大学時代に、狙っていた同じ大学の男子をいかにも女の子らしい女子大の人に取られるとすごく悔しいらしい。高偏差値ゆえの悩み。

人文社会的な定義付けとか確かに肌にあわないのだが…

単なるメモ。


松尾 隆佑『利害関係理論の基礎―利害関係概念の再構成と利害関係の機能についての理論的考察―』

なお、ここで社会科学的概念と言うのは、現実を抽象化する道具として、複雑な社会現象を正確に記述し、解りやすく説明するとともに、厳密な分析を行うことを目的として用いられる概念を意味する。抽象化の道具である以上、それは卖に現実そのままを写し出して切り取るための道具ではない。社会科学的概念は、現実を前提とし、現実に存立の基盤を有するが、現実を把握し、分析するという目的上、常に現実との間に一定の緊張関係を保たなくてはならない。それゆえ、利害関係のような日常語が社会科学的抽象概念として用いられる際には、多尐なりとも日常的用法との意味のズレが生じるであろうが、これは必ずしも問題とはされない
(中略)
このことはもちろん、社会科学的概念が現実から乖離してよいことを意味するわけではない。現実を説明するためには現実に基づかなければならない。だが、現実をそのままなぞっただけでは現実を説明したことにはならない。Aという項を引けば「AはAである」と書かれてある辞書は全く役に立たない。Aの説明であるためには、「AはBである」と書かれていなければならない。まして、説明を超えて分析であるためには、Aの性質や機能、AがBであるための前提や条件などについての整理・検討が必要とされる。そのような分析を助けるのが社会科学的概念にほかならない。社会科学の役割は、現実を反省し、相対化することを通じて、現実を理解し、現実に働きかけるための知的資源を提供することにこそある。
また、社会科学的概念が再構成される際の定義は、一種の規約として為されるものであるから、その真偽を争うことはできない。社会科学的概念の再構成という作業を評価する基準は、その概念を用いることによって、より緻密な理論の構築が可能になり、分析の精度と効率性が高められ、現実状況についてのより正確な把握が導かれるという蓋然性の程度に求められる。本稿が試みる作業の成否についても、こうした評価基準を適用されたい。
以上のような方法により、利害関係概念が厳密な意味内容を伴って再構成されたならば、利害関係が個体の手に力を増す手段としていかに機能し得るのかを理論的に問うことが可能になる。先に述べたように、利害関係は一種の力になり得るように思える。では、実際のところ、利害関係として把握し得る諸状態・諸関係は、現実の政治社会の中でどのような機能を果たしているのだろうか。利害関係が一種の資格、地位でも有り得るとするなら、それは、制度的な資格・地位身分としての権利との間に、何らかの関係性を有しているのであろうか。個体が権利以外に用い得る手段としての利害関係の可能性を測るためには、こうした問いに答えを与える必要がある。
そして、利害関係概念の意味内容が厳密化され、利害関係の機能が明らかにされたならば、利害関係についての一応の一般的理論枠組みが構築されたことになる。そうした一連の作業が果たされた地点には、利害関係という観点から政治社会を分析することの理論的意義と、個体が力を増す上での意義が明らかになるはずである。

学会に挑戦する筑波大学

今日TBSで筑波大学の長元教授の改ざん問題が取り上げられていた。事件からだいぶ月日がたったが、今だに全容がよくわからない。もちろん、私にはこの件の是非を判断する能力はない。が、気になるのは、プラズマ学会側は長氏を支持しているということ。論文の取り下げもなされていない。
 以前に東大のRNAの研究者が改ざんで問題になったが、そのときは論文を取り下げているし、学会からも疑われていた。番組で長氏は「科学とは別のところで何かが動いている」といっていたが、なるほど、学会から支持されているのに、懲戒免職とかなぞすぎる。データの正確性とかって、その論文を掲載した雑誌がまず判断すべきであって、それがうまく機能しないならその分野の研究者が判断すべきことでしょう。大学側は、裁判で事実は明らかになる、と言っているが、科学的データを犯罪者の殺意の有無などと同次元に考えているのであろうか。
 普通、一度は長期雇用を約束したものに対し、学会が疑ってもいないデータを大学院生の証言をもとに改ざんと決め付け、懲戒解雇にするのは、スピードのある意思決定だったと思った(皮肉)。まあ、大学も官僚組織だし、どれだけ業績を上げてもそこに合わない教授ってのはいるのだろうけど。
 

クジラの情動はそれほど発達してない。

 以前、イルカについてはこんな記事 http://d.hatena.ne.jp/blupy/20090915/p1
を書いた。イルカやクジラに反対している人は、それらの、心、知能が人間に近いと感じているからだろう。
今頃になってたまたまこんな記事を発見した。
元論文→http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1571141/
http://blog.livedoor.jp/mesenchyme/archives/51201989.html

読むとお分かりになりますが、クジラの脳と人間の脳の違いが書かれています。クジラの大脳は運動性能に見合っただけ運動系皮質や連関神経路が発達しており、また音を聞き分ける能力を反映して、上丘よりも下丘が猛烈によく発達しているのがわかります。ところが、左右の両大脳半球を連結する脳梁の発達が著しく悪く、両半球連結、特に高度な知能活動を支える前頭葉の活動には全く不向きであるのが明らかです。さらに驚くべきことに、大脳半球の大きさに比して、感情や記憶をコントロールする大脳辺縁系、海馬の発達がほとんど無いか逆に縮小しているようにみえます。つまりクジラには動物愛護協会のロマンチストが勝手に思い描いているような感情や情動の働きはほとんど無いのではないかと推定されます。

 もちろん、脳の構造だけ見ても、機能は解明されないわけだが、クジラがどれほど賢いか、という知見は掘り下げる価値がありそう。
あそうそう、別にここで私はだからクジラを殺してもよい、などと主張しているわけではない、念のため。

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 今さらながら、RSSリーダーはてなからライブドアに変えた。やはり更新が早い、というかはてなが遅すぎ。あと実ははてなでは日記のidとは違うidでRSSを使っていたので、サイトの登録がめんどうだった。現在大量に新しいサイトをとりこんでいる。

季節性情動障害(SAD)には、光療法より認知行動療法の方が効果がある

University of Vermont (2009, October 17). For SAD Sufferers, Cognitive Behavior Better Than Light Therapy At Preventing Recurrence, Study Suggests. ScienceDaily. Retrieved October 17, 2009, from

http://www.sciencedaily.com/releases/2009/10/091016163659.htm
Seasonal affective disorder - Wikipedia

季節性情動障害(SAD)は、冬季うつ病などとも呼ばれる。日照時間が少ないために、セロトニンが不足するなどして、生じるという説明が一般的にされるようだ。そのため光療法が効果的だと考えられてきた。しかし、この研究によれば、光療法よりも認知行動療法(CBT)の方が効果的らしい。SADの再発率が、CBTの場合7%であるのに対し、光療法では37%で、二つを組み合わせた場合は5.5%であった。これは先行研究と異なっている。先行研究では、6週間の処置の結果、混合で80%の緩和だったのに対し、CBTと光療法は両方とも50%しかなかった。なぜこうした違いが生じたのか。
 この論文を出したバーモント大のKelly Rohanは、今回の研究のポイントは、再発率に着目したことだと言う。SADに限らず、精神疾患に対する心理療法の効果は、はじめどれだけ高くても尻つぼみしまいがちだ。混合で80%改善したのは、統制がもっともきちんとしているからで、その次の冬に自分で同じ処置をしなければまた再発してしまう。とりわけ毎日30分光にあたるといった行為はCBTよりも実践率が低い。そのため再発率を比べるとCBTの方が効果的だという。

本筋に関係ないが驚いたのは、 

A $2 million, five-year grant from the National Institute of Mental Health will advance the next phase of Rohan’s research.

 この研究に2億円近くものグラントがついているらしい。

小川誠二ノーベル賞受賞で一番喜ぶのは慶応大学

 いよいよ明日、ノーベル賞の発表。日本からは、fMRI(functional MRI)の生みの親、小川誠二氏がノーベル医学生理学賞の候補に挙がっている。すでに週刊誌などをにぎわせているようだ。受賞すれば、いろんなとこでBOLD原理などが解説されるのだろうか。彼のノーベル賞受賞で一番喜ぶのは、実は慶応大学かもしれない。一応小川氏は、なぜか慶応の訪問教授にもなっているから。慶應から初めて、みたいなのが目に浮かぶ。
しかし、やっちゃったね、濱野生命科学研究財団。あと数年がまんすれば、ノーベル賞を輩出した企業として名が売れたのに。