東大合格の80%は、家系に東大出身がいるかどうかできまる?

有名大学に入るにはまず遺伝だ?

http://d.hatena.ne.jp/tazan/20090208#1234086051

有名大学に入るにはまず遺伝だ。自分の家系に東大卒が一人もいなければあきらめろ。合否を決める要因は80%は遺伝、残り20%は突然変異かまぐれだ。

日能研の社長がTVタックルで発言したらしい。
みも蓋もないが本来、学習による成長を主張しなければならない受験業界だけにやたら説得力がある。

文化資本による説明の矛盾

他山の石書評より

私は社会学系の人間なので遺伝は否定する。だが「文化資本」というのが存在するとは思う。

しかし、このようなことを日能研の社長が言ってしまっては、身も蓋もない。おそらくぽろっと漏れた経験的な事実なのだろう。経済的にも豊かで、文化資本も豊かな家庭の子どもがお受験を経て、東大に行くんだろうなと考える。日能研は中学受験の塾であり、受験を煽らなくては商売にならないが、こんなことを言ってしまっていいのか。受講生を集める上で支障を来たさないか。

なるほど。遺伝より文化資本や階層が影響してるんじゃないかという意見。

 しかし、そう簡単に遺伝を否定すのも早計だし、文化資本だけでは説明できないことがある。
たぶん、日能研社長の発言は、自分のとこの子供をみた経験論からきているのだろう。つまりこの発言の背景には、名門中学に受かるこの親に東大出身が多いという事実と、それ以外の親の子は同じようにやってもそこまで到達しないという事実が含まれている。非東大家庭の子どもがでも日能研の訓練によって名門中学にやすやすと合格しいたらこういう実感にならないはずだ。多くの人は、この社長が暗に「トレーニングの無意味さ」を主張してると感じたからこそ、学習塾の人間なのにそんなことをいうなんて、と感じたのだろう。
 ところがこれは文化資本によって学力が大きく影響されるという説明と合致しない。だって文化資本は非遺伝的要素だもの。文化資本によって変わるような能力は、トレーニングによっても変わるんじゃないか。だから遺伝を否定して文化資本による説明を受け入れると、「トレーニングが無意味な子供」がいる経験的事実を説明できなくなる。

 もっとも非東大系の子供たちの親でも、小学校から塾に行かせる時点で、ある程度経済力があり、教育熱心であることはうかがわれる。塾に行っている中でも東大家庭は…ということだから、階層という大枠のはなしは直節当てはまらないと思う。
 また文化資本の影響といったって中学受験でどれだけ出るというのか。電車内にはってある日能研の広告問題を見る限り、教科によってはそんな高い文化資本は必要なさそうだ。逆に名門中学クラスの算数の難問になると、親とのちょっとした知的な会話や教養番組や読書の量によって解けるようになるとは到底思えない。
 そもそも、この社長、東大合格うんぬんいってるけど日能研は中学受験向け。東大行くのが当たり前のような名門中高一貫校(灘とか開成とか)に合格するかについて遺伝によって決まるというのならそれほどおかしくないんじゃないか。

IQは遺伝が6割だが…

 じゃあ、知能と遺伝の関係はどうかというと、行動遺伝学の泰斗、安藤寿康氏によれば
http://www.moriyama.com/netscience/Ando_Juko/Ando-4.html

 たとえばIQって、遺伝率が50〜60%と言われているんです。ということは、6割は遺伝するけども、4割はそれ以外。自分の思うとおりに変えられるかどうかはちょっと別としても、遺伝以外でも変えられる部分は大きいわけです。
 IQの標準偏差は15あるんですね。つまり±8〜10くらいは動き得ると。これ、そのくらい変わるとですね、ちょっと語弊がある言い方を敢えてしますが、人間変わって見えるんですよ。おっ、ちょっと冴えてきたじゃん、って感じにね(笑)。

○なるほど。確かにそれだけ変わればね。

■だからその程度は変わりうる。ある程度、量的なニュアンスを掴もうとすると、こういう感じです。でもIQ80の人が120になるっていうのはちょっと難しい。それは確か。そういう意味では決まっているのかもしれない。

IQは遺伝が60%ということらしい。大幅な上昇は無理でも、「ちょっとさえてきたじゃん」程度の変化は、十分遺伝以外の要素でだせるという。
80%とはかなり離れた数字だが、小学校くらいだと発達の問題もあるのでもうちょと大きいのではないか。
 また、そもそも東大合格が当たり前な名門中学入試は、非常に狭き門で微妙な差が勝敗を分ける。中学受験者は、みな環境的な豊かさ(日能研などに通える)はもっているだろうから、遺伝的強みをもってるかどうかはかなり大きな差となるだろう。
 つまり遺伝以外の残り4割の要素が同じなのだから、ほぼ遺伝だけで決まってることも十分あり得る。

有名中学はまず遺伝だ!

じゃあ東大合格は遺伝なのか。
 そんなことない。だって名門中学に通う子供も6年間、毎日5時間とか勉強しないでしょ。少なくとも中学受験期につめてたほど勉強するわけじゃない。
つまり、同じ東大合格者でも中高6年間の過ごし方は様々。だから、むしろ遺伝以外の性質が大きく働く可能性が十分にある。また、科目も算数や国語と違い、英語や数学など暗記が効果的なものが大半を占めるのも大学受験の特徴。つまり、名門中学出身者に同じ勉強量や方法で勝てなくともやり方次第ではチャンスもあるということ。

いずれにせよ、中学受験に限定すれば、遺伝の要素が強いのは当然じゃないのか。


まとめ
日能研では、東大家系のこどものほうが名門中学に合格しやすく、非東大家系のこどもがいくらがんばっても合格しずらいという状況がうかがわれる。
文化資本によって学力が決まるという説明はトレーニングで伸びない子を説明できない。
・IQは遺伝が6割といえども、遺伝以外の要素が同じなら、遺伝が強く発現する可能性は高い。だから中学受験では遺伝の要素が大きそう。
・名門中学に受からなかったからといって東大をあきらめるのは早い。受かって安心するのも早い。あと6年は長し。