脳と経済学

http://a-gemini.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-b51d.html
最初に言っとくと茂木氏の説明は笑止千万です。
まるで経済のバブルは、脳のバブルによって起こるとでも言いたげです。脳のバブルの中身は、神経細胞の活動が急激に上がって下がるといってることから、どうやらニューロンの活動電位のことのようです。
活動電位というのは、静止電位から脱分極して起こり、すぐ過分極する。
茂木は、それがバブルに似ているから人間がバブルを起こすというが、当然、その前提として活動電位の形状が何かによって読み取られなければならない。
しかし、活動電位の形状なんて最近の測定器によってわかったこと。それ以前に人間が活動電位の形状など知るすべがない。小型カメラが細胞内を監視していたりすれば可能だが、そんなものは神経細胞内にない。
だから活動電位の形状はどうがんばっても人間の活動に影響を与えるはずがない。

(追)いや、活動電位の「突然上がって下がる」機能がほかに影響あたえていると考える人もいるだろう。
しかし、活動電位は、別のシナプスに伝達物質を送る機能しかないのでそれは無理。



つーか彼の論理だと神経細胞をもった生きとし生ける動物すべてがバブルを起こすことになるんですが。


ふぅ、つかれた。しかし、これは水伝と同じで、笑うのは簡単だけどいざおかしい点を指摘するのは骨が少々折れる。
それで、a-geminiさんが以下のように言いたいい心情はわかるのだが

さすが、茂木健一郎先生です。
バブルを脳科学の言葉で説明すると言う独創性。
経済学や脳科学というジャンルの壁をものともしないスケールの大きさ。
まさにノーベル賞クラスの理論です。

我々は旧態依然とした経済学にしがみついたままではいけないのです。

パラダイムの転換です。

エピステーメーの拡大です。

経済学者は、旧来の枠組みに囚われず、経済学と脳科学の融合に真剣に取り組むべきです。

しかし、近年、脳科学と経済学の融合は普通に図られてます。
いわゆる神経経済学*1という分野です。
これはかなり新しい分野*2で2004年のscienceでも紹介されています。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/306/5695/447
去年以下の本も翻訳されました。

神経経済学入門―不確実な状況で脳はどう意思決定するのか

神経経済学入門―不確実な状況で脳はどう意思決定するのか

どいういう研究があるかというと、たとえば上の本(p306〜p310)には、
期待効用の符号化には、頭頂葉のLIP(頭頂間溝後壁)ニューロンがかかわっている、といったものがあります。この研究はアカゲザルに「仕事かさぼりか」選択させるゲームをやらせ、Nash均衡が生じるときのLIPニューロンの発火頻度を図ったもの。Nash均衡時には、その選択の相対的な期待効用が全く等価になるので、もしLIPニューロンが期待効用の符号化に関連しているなら、Nash均衡になる選択を取り続ける限りニューロンは安定している。実際、LIPニューロンの発火頻度は安定していた。

こういう流行があるので茂木に経済誌から仕事が来てもおかしくないと思います。脳科学者が経済学を語ろうとすことが問題なのではない。
そのクオリティが問題なのです。

*1:もっとも後日、神経経済学に対する疑問も書くつもり

*2:たぶん、予算獲得などが背景にありそう。行動経済学認知神経科学があるのにその存在意義がよくわからないから。