アフガニスタン復興支援の不可能性

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DVD2つ。ラスベガスのほうはおもしろかった。チャーリーもまぁまぁ。以下基本的に見た人向け。したがってネタばれ注意。
 すでに多くのレビューアーに指摘されるまでもなく、この映画はチャーリーのアフガン支援が中途半端だったため、タリバンビンラディンなどの過激派を招き、911につながったことを示唆するもの。したがってコメディだが全体として皮肉な感じにしあがっている。
 結局チャーリーは当初500万ドルの予算だったアフガン作戦費を10憶ドルまで膨らませることに成功した。しかし、最後に学校建設の100万ドルを獲得できなかった(ために、支援したムジャーヒディーンは過激派となっていく)という落ちで終わっている。支援するなら最後までやりきれというわけである。
  ここから、現在のイラク戦争が不徹底のまま引き揚げるとろくなことにならんという教示を感じるという意見もある。しかし、いずれにせよ、あとからなら何とでもいえるという気がする。元になったチャーリー自身の伝記は2000年だが映画は2007年。
 映画ではチャーリーが教育の重要性に気づき、100万ドルの予算を主張したが失敗した。ということで一応彼の面目が保たれてるけどめっちゃ胡散臭い。たぶん後付けの話だろう。なんで10億ドルが引き出せて、100万ドルが駄目なことがあろうか。いかんせん極秘予算だけに裏付けはとれない。
 第一100万ドルで足りるのか。5万どるで300人の学校が立つして、アフガンの14歳以下の人口は約1000万。1000万÷300=3.33万個学校が必要になる。現在の15歳以上のアフガン人の識字率は約30%で、彼らが一応学校教育を受けたとして1/3を引くと、約20万。5万×20万=10億ドル!!信じられない額になる。まあ計算間違いあるかもだが、かなりの巨額になるのは確かだ。
 仮に80年代当時、100万ドルが今の4/3の価値があるとしても、25個くらいしか作れない。しかも5万ドル/300人は、アフリカでたった4教室つくりしかも運用コストとかは入っていない。そんな学校25個じゃ1000万人の子供に政策的な効果を出せるはずがないだろう。
 実際日本もアフガンの人道支援にかなりの額を注いできた。外務省によればすでにチャーリーの軍事費より多い12億ドル以上で、教育費だけでも3000万ドル近くあるhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/area/afghanistan/data.html">http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/afghanistan/data.html
 

(5)アメリカ同時多発テロ事件以降

 我が国のアフガニスタン復興支援

  総額約12.4億ドル
(内訳)

1.人道支援:総額約1億7500万ドル(2001年9月以降)

2.復興などへの支援:総額約10億6800万ドル(2002年1月から2007年9月)

1)政治プロセス・ガバナンス:総額約1億6500万ドル

(イ)メディア支援:約2600万ドル
(ロ)選挙人登録・選挙実施支援:3000万ドル
(ハ)暫定・行政政権への行政経費支援:1億900万ドル

2)治安の改善:総額約1億9300万ドル

(イ)DDR及びDIAG:約1億4000万ドル
(ロ)地雷対策:約4200万ドル
(ハ)警察機材・病院:約420万ドル
(ニ)麻薬対策:約650万ドル

3)復興:総額約7億1000万ドル

(イ)幹線道路・二次道路整備:約2億3400万ドル
(ロ)保健・医療:約5000万ドル
(ハ)難民・国内避難民の再定住:約8800万ドル
(ニ)インフラ整備 (幹線道路を除く):約3000万ドル
(ホ)教育:約2900万ドル
(ヘ)農業・農村開発:8200万ドル
(ト)その他(技術協力を含む):約1億9700万ドル

 もちろん、アメリカによる破壊後で80年代とは状況が違うという意見もあろうが、人道支援だけでもかなりの額がかかることがわかるであろう。日本一国でこれだけ投じても現状の混乱状態なわけだから、12億ドルじゃ全然足りず、教育費だけで10億ドルというのもあながちまちがってってないように感じられる。
 以上、支援するなら徹底してすべきという考え方が、いかに実現性が薄いかわかってもらえたと思う。ああいう国で戦争始めると泥沼化するのは必然なのかもしれない。
 そういうことを織り込んで見ると、100万ドル出せばなくて授賞式で浮かぬ顔をしているという落ちになってること自体がチャーリーの先見の甘さを露呈させてるように思える。あのとき100万ドルさえ出せてれば、という考えにしか至らないことが今になっても支援の困難性、不可能性に鈍感なチャーリー(と製作者たち)のこっけいさを示している。
 
(参考http://africa-rikai.net/projects/building_our_school.html
http://www.kibou-school.org/geography.htm