それって「劣ってない」んじゃなくて「優れている」のでは?

http://www.asahi.com/national/update/0124/TKY200901240086.html

生徒の理系離れや国の科学技術力の低下が心配されているが、理系コースの高校3年生の基礎的な「数学力」は、世界トップクラスだった約30年前とそれほど変わっていないことが、東京理科大数学教育研究所の大規模調査でわかった。24日、同大学で開かれた数学教育研究会で報告した

調査対象は「数学III」「数学C」を履修している理系コースの高校3年生。05〜08年度に延べ214校の約1万5500人にテストをしてもらい、日本が香港に次ぐ世界2位の成績だった1980年度のSIMS(第2回国際数学教育調査)の結果と比べた。

 08年度のテストは1セット11問を4セット(計44問)つくり、このうち32問は80年度SIMSの問題から選んだ。

 その結果、共通問題で今回の方が正答率が高かったのは19問、SIMSの方が高かったのは3問。05〜07年度も同じ傾向で、「30年前の高校3年生に比べて成績は劣っていない」と結論づけた。

世界2位だったときと同じとはすばらしいではないか。
しかしそれだけでは終わらず、

しかし、08年度で正答率が80%以上だったのは、いずれも選択式で、記述式の成績の方が全体的に悪かった。

 また、4年続けて同じ問題を出した15校で年ごとの成績を比べたら、その正答率は05年度57.4%、06年度58.6%、07年度54.1%、08年度52.4%と低下傾向だった。

と低下傾向があるとしめている。
「同じ問題」というが全部で44問あるうちの一つのことだろう。一問の不出来にどんないみがあるのか。実際、数学は時間が足らないことが往々にしてあるから、どの位置にだすか(最後の方か)によってもそうとう結果は変わってくるはず。
 仮にある問題が不出来だとしても、それ以上の数の問題ができるようになったのなら総体として上昇したといえるのではないか。
実際、30年前と比べて正答率が高かったのは19問あり、低かったのは3問だという。これって現在のほうが優れているっていうんじゃない?「劣ってない」とは過少評価だろう。
  すくなくとも逆の結果だったら、見出しは「30年前より低下」になっていたはず。
 学力が低下してないと気が済まない人々だな、つくづく感じた。
あとよく聞くのがしたのような意見
http://d.hatena.ne.jp/leo/20090111

先輩はふと,「ゆとり教育前後で,学生がぜんぜん違うね」と漏らした。どう違いますか?と尋ねると,明らかに知識量が少ない,という。これくらい常識として知っているだろう,ということを,いちいち説明しなければならなくなったらしい。これは私も常々感じていることで,明らかに高学歴な子でも,これくらい知ってるよね?とこちらが期待することを平気で知らないと言う。それはそれは驚くほどに,ものを知らない。

しかし、実は「ゆとり教育」ってのは最近はじまったもんじゃない。1977〜78年の額指導要領改訂「ゆとり」ある学校生活の実現から始まっている。1989年にふたたび改訂され「新しい学力間」の浸透がはかられ「生活科」が導入された。98年の改訂で総合学習が導入された。
 つまり、「普通の教育」⇒「ゆとり教育」という急激な変化はなく、漸進的に学習内容は削除され、新しい要素が取り入れられてきたわけだ。まあ77年を導入の年と考えるなら、今の30代はおろか40代もゆとり世代に入ってしまう。
 だとすれば、「ゆとり教育」か「詰め込み教育」という択一的な問題でなく、学校が課す学習量をどれくらいにするかという量的な問題なのだろう。

あと大事なのは記憶。記憶。「ゆとり教育」には80年代の校内暴力などの学校荒廃が背景にあり、当然世論の支持もあった。
しかし…  

最近,「ゆとり教育はダメだ」という話をよく聞く。本当によく聞く。中には,「ゆとり教育がダメだなんて自明のことじゃないか,みんな反対していたんだ,なぜ政府にはそれがわからなかったんだ」とまで言う人もいる。

これは真っ赤な嘘だ,ということを,私は知っている。

何故かというと単純で,昔調査をやったことがあるからだ。とある経緯で,ゆとり教育導入前後に,「あなたはゆとり教育に賛成ですか?反対ですか?」という質問紙調査をした。結果,賛成・反対は五分五分だった。半分はゆとり教育に賛成していたのだ。そして反対派も,「積極的に反対というわけではないけど,円周率が3なのはちょっと・・・」くらいなものだった。

 実際、戦前においても「一斉授業はよくない」とか「生活に役立つ知識を」とか「教科横断的な総合学習を」とか「学習内容が難しすぎる、減らせ」とか「ゆとり教育」の先例はいくらでも見つけられる。それがどういった末路をたどったかを社会で忘却するなら一生「詰め込み」⇒「ゆとり」⇒「詰め込み」⇒「ゆとり」…の無限ループが続くだろうよ。

http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20090125/1232833490